船乗り
船乗りの魅力

航海類型 尾形 文男

「海外から輸入する食糧」は、何で運ばれますか?
「石油・天然ガスなどのエネルギー、テレビや車などの材料」を運ぶものは?
「海の環境や海洋生物の研究・調査・開発・管理」を行うために必要なものは?
「魚を獲る」人々にとって必要なものは?
「国内の物流の下支えをしている」のは何ですか?

 全ての問いかけに共通する答え、それは“船”です。私たちは生活している限り“船”を無視することはできません。その船を動かすのは“船乗り”です。

 “将来、船乗りとして活躍したい!”という熱い志を持っている中高生が、県内、いや、日本国中に何名いるでしょうか。いま現在、日本全国で船乗りが不足しています。船乗りがいなければ、日本の経済は成り立ちません。まさに今、日本は“物流停滞の危機”に直面しています。

 なぜ船乗りは人気がないのでしょう?「船・ふね」は旅の移動手段といった優雅な乗り物、釣りなどの余暇を楽しむためのもの、というイメージを持っている人が多数でしょう。船に乗ることは危険である、と避けられる傾向にあります。また、海難事故のニュースが出ると“船乗り=危険な仕事”という、負のイメージが先行しています。しかし、ここでみなさんに考えていただきたいのは“どのような職業についても「事故・怪我」はつきもので、「船」だけが特別ではない”ということです。事故というのは、人間が生きている以上、いつ、何が起きるかわからない、避けることが出来ないものではないでしょうか。

 そこで、我ら“航海類型”の出番です。仕事上、危険が避けられないならば“いかに未然に防ぐか”を真剣に考える必要があります。“起こりうる危険”がどのようなもので、それに“どう対処すべきか”、いかに先を読んで危険を避けるかが重要になってきます。それを踏まえ航海類型では、船上(海上)で起こる様々な事態に対応できるスキルを、日々の授業、実習、そして2ヶ月間におよぶハワイ沖までの航海実習の中で身につけることができます。特に、航海実習は水産高校最大の特徴のひとつで、これによって、毎年、生徒たちは大きく成長を遂げます。

 高校を卒業して就職した場合、初めてもらう給料(初任給)は、どの位であるかご存じでしょうか?一般に、高卒の初任給は13~15万円ほどです。ボーナスを含め年収200~250万円ほどになります。一方、船乗り(見習い)の初任給はだいたい月給25万円、年収は300~400万円にもなり、なんと、船乗り(しかも見習い)の収入は、大学を出たばかりの学校の先生よりも高いのです!! 

 工業・農業・商業・水産の産業のなかで、高校卒業後すぐに、これほどの収入が得られるのは“水産(船乗り)”以外に考えられません。この高収入は、“船乗りの魅力”のひとつです。

 航海類型の職員室には、毎年、「船乗り」になった教え子が、高級車に乗って訪ねてきます。「もっと大きな船に乗るために、さらに上級の資格を取りたい」と訪れる卒業生の誰もが言い、その表情は生き生きとして、覇気に満ち、彼らの入学当時の様子からは、想像もつかなかった姿に感心させられます。

「船乗りは楽しい。自分がやればやるだけ結果が出る。本当にやりがいのある仕事ですよ」
「立派な船乗りになったなあ」

もともと船乗りだった私は、大人になった卒業生とそんな会話をするのが何より楽しみです。
もう一度、繰り返しますが、現在“船乗り”は不足しています。
「体力に自信がある、根性は誰よりもある。そして、何より海が好きだ」
私たちは、そんな若者を “日本経済を支える船乗り”に育て続けています。

うんちく
語源を学ぼう

情報科学科 若松 英治

 水産高校に勤務しているのだから少しは船に関する文化や歴史に触れたいと思い、昨年から船にまつわる歴史小説を読んできました。その中で、船や魚に関係した言葉の語源について知ることがあります。そこで今回は、現代でも使われている言葉を紹介したいと思います。
注)紹介する語源については諸説ある中からのものもありますので、“これが絶対に正しい”というわけではありませんので、ご了承ください。

 「まとも」
 よく、“まともな人間”などと言ったりしますが、ここで言う「まとも」は漢字なら「真艫」と書きます。「真艫」とは、船の最後方、いわば船尾のことです。そこから“真艫な風”といえば、進みたい方向に吹いてくる真っ直ぐな追い風のことを言います。江戸時代、幕法により、帆は一枚と限られていましたから風の向きは重要なものでした。ですから“真艫に吹く風”は嬉しい風だったでしょう。転じて、現代では“まとも=真っ当な”といったようなニュアンスとしてつかわれます。また、「真艫な風」は「順風」とも言いますから、「順風満帆」と言えば追い風を帆いっぱいに受けて船が軽快に進む意味合いから、物事がすべて順調に進行している様を表現しています。

 「おもかじ」
最近、CMでもよく耳にする、「おもかじ(面舵)、いっぱい!」という一言。これは、『舵を右一杯(最大舵角約35度)にきりなさい』という意味です。ちなみに、左に曲がりたいときは“取舵(とりかじ)”というようになります。実は、この呼び方は十二支に由来しています。船首方向(進行方向)を12時の子(ね・ネズミ)として時計方向に十二支を配置すれば、右側の3時方向は卯(う=ウサギ)、左側の9時方向は酉(とり)になります。そこで進行方向から見て右側を卯面(うも)と呼び、左側を酉(とり)と呼ぶようになりました。そこから卯面(右)に舵をきることを“面舵”(おもかじ)、酉(左)に舵をきることを“取舵”(とりかじ)になりました。

「くだらない」
 徳川家康の手によって急速に発展した江戸は、幕府が置かれ、江戸期最大の城下町として多くの人口をかかえた都市でした(一説によれば幕府が開かれた後の江戸は、百万人もの人々が生活する世界有数の大都市であったと考えられています)。
上方(現在の近畿地方とその周辺)から江戸へもたらされた生活物資や酒は「下り物(くだりもの)」と呼ばれ、最初は陸路で運ばれることが多かったために、人口に対してごく少量しか供給されなかったことから貴重なものとされていたようです(今で言う外国製のものを「舶来品(はくらいひん)」といってありがたがるのと同感覚)。やがて、船が発達するに伴い、陸路よりも早く大量の物品が上方から運ばれるようになりますが、やはり品質の良さもあって貴重なものとされていたようです。

 反対に、関東でつくられたものは「下り物」よりも劣っているとされ、「下り物ではないもの=くだらない」、「関東産の物品は上方では売れない、上方に下ってこない=くだらない」となり、転じて現代では“取るに足らないもの、質のよくないもの”というニュアンスでつかわれるようになりました。

コラム
魅せられて海

情報科学科 若松 英治

 私は昨夏、北海道大学が所有する「おしょろ丸」に乗り込み2泊3日の洋上生活を送るという体験をしてきました。私自身は水産高校に勤務しておりますが、船の中で寝泊まりする経験は初めてのことで、船酔いをしないように酔い止め薬を飲み、緊張しながら船上で活動していました。時間が経つにつれ、余裕ができたあたりで、ふと外へ目を向けると海は広く見渡す限りきれいな紺碧で、肌をなでる海風は格別に心地良く、いまさらながら“海に生きる職業への憧れ”が自分の中に生まれました。そして気付けば“海に魅せられている自分”に気付きました。中学校時代に同じような体験ができていれば、世界を股にかける航海士を目指していたかもしれません。

 普段テレビでも飽きるくらい海を見ているはずなのになぜいまさら海に魅せられたのか。それは、“テレビで見るものや人から伝え聞いたこと”というのは、自分の脳に強い刺激として印象に残らないのではないでしょうか?つまり、“百聞は一見にしかず”という諺通り、実際に見る景色・光景というのは圧倒的に美しく、脳裏に鮮明に残るものだからだと思います。

 “海というフィールドで仕事をする”ことに対して、ほとんどの人は考えたこともないと思います。海で働くことを遠い世界の出来事であるかのように感じていると思います。しかし、食料品の材料、生活品や工業製品を支える石油や鉱石は船で運ばれます。輸入品の9割は船で運ばれます。海というフィールドで働く人がいなければ、私たちの食事や生活全般が成り立ちません。小中学校で海に関する授業は受けてきましたが、“海洋立国・日本”で生活しているとはいえ、ほとんどの人が海に触れる機会がそう多くないのが現状だと思います。船に乗って海を眺め、風を感じて、食事をして、生き物を獲って、生物を観察して・・・、子供の頃に航海体験ができれば必ず海の魅力を感じることができ、もっと海を身近なものをして感じることができるでしょう。

 これからは、もっと、海に目を向けてみませんか?素晴らしい世界が待っていますよ。

コラム
アイディアで活路を!~ピンチをチャンスに~

情報科学科 若松 英治

 東日本大震災で校舎・総合実習棟の一階が浸水し、溶接機械や食品加工工場が使えなくなってしまいました。さらに、万石浦にある栽培漁業実習棟では、飼育していた生物が全滅、万石浦にある養殖いかだも流されてしまいました。現在本校は石巻北高等学校の敷地内にある仮設校舎で学習活動をしています。被害は大きかったものの、本校ではこれを“ピンチ”とは捉えておりません。

 例えば、情報科学科では、震災で厳しくなると考えられる就職率100%を維持するため、一年間通して複数の国家資格の指導を行う体制を整えました。これにより、例年より多くの生徒が国家資格に連続的に挑戦するようになりました。今年は、生徒たちの熱意から新たに「独立して社長」も夢ではない“電気工事士”の講習も始め、生徒たちはこれまでになく集中して熱心に資格に取り組むようになりました。万石浦の養殖施設はこれまで先輩方が築いた“養殖いかだ”が既にあったため、その先からの実習となっていましたが、今年はゼロからのスタートです。“いかだ”を自分たちの手で組み、実習施設を再び築きました。このように例年よりも、より多くのことを学べる機会として捉えれば、“チャンス!”と考えることができます。

 また、食品科学類型では加工場や冷凍庫まで使用不可となり、これまでのように缶詰をはじめとする食品製造ができなくなりました。当初「今ある施設では“何もできない”」と半ば諦めていましたが、3年生を中心に「与えられた環境で“できることは何か”」を模索してきました。そこで、仮設校舎の調理室を徹底的に掃除し、磨き上げることで“営業許可”を正式に受け、仮設校舎でもできる新たな商品として“干物”に着目し、文化祭で販売するなど、ブランド化を目指して立ち上がりました。何も無ければ何のアイディアを生み出すことなく過ごしていたかもしれません。

 震災が要因で積極的に行動できたこと、より多く学ぶことができたこと、深く考えて良いアイディアが生まれたこと、など考え方や気の持ちようで“ピンチ”は“チャンス”に変わります。「○○がダメだから何もできない」ではなく、「○○はダメだけど□□はある。今できることは何か!?」と考えれば希望が湧いてきますし、心も躍ります。水産高校は、確かに大きな打撃を受けましたが、学校全体で大切なことに気付けたのではないかと考えています。

部活
Grateful Breeze

航海類型 吉田 愛美

 宮城県内にヨット部が存在する高校は8校。たった8校?!と思うかも知れませんが、実は宮城県が全国で一番たくさんヨット部がある県なのです。“ヨット競技”はエンジンを使わず、セール(帆)のみを使い、風や潮を利用して船を進ませる競技です。

 昨年学校が被災した際、ヨットが流失し、練習や試合のためのヨットの確保が難しくなり、部活動に大きな支障が出ました。時が経つにつれて、多くの方々からの支援や励ましのおかげで、少しずつ練習ができる環境が戻ってきました。そして今年の夏は、ヨットに乗れる喜びを噛みしめながら土日も休まず毎日練習しました。その喜びの中で、部長はただの一度も部活を休まず、たとえ具合が悪くても必ず部活に来る生徒でした。誰よりも物を大事にし、準備や片付けは誰よりも早く、作業が正確で他の部員の模範となる人物に変わってきた彼は、まさに進取(進んで物事に取り組む)の精神に富んでいました。

 今年6月の県総体壮行式。普段無口なヨット部長から発せられたのは、「頑張ってきます」の一言でした。しかし、そんな彼が率いるヨット部は夏の猛練習の成果を発揮し、今年6月の県総体で37年ぶりに個人と総合で優勝することができました。東北大会では入賞することができませんでしたが、今年度の全成績の結果から、国体選手としてに部長ペアが選ばれました。

 「頑張ってきます」としか言わなかった彼が、国体壮行式では、「ご指導してくれた顧問の先生、ご支援いただいた方々に恩返しができるように頑張ってきます。」と話しました。私は、彼の心の中の大きな変化を感じました。その言葉は、形ばかりの社交辞令ではなく、“本心から出た言葉”として私の心に深く、深く、染み込んできました。
ヨットや練習場所を失った絶望感の中、ヨットを譲っていただくご支援をいただきながら、ようやく希望が見えてきた頃に、再び練習場所を失うなどのトラブルが発生、それらを共に乗り越え、共に一喜一憂してきた私たち顧問と生徒の間には、確かに“絆”が生まれていたように思います。「恩返しがしたい」その一言に、“流失したヨットを何とか調達してくれて、土日も夏休みも朝から晩まで休まず部活についてくれた顧問の先生と、支援してくれた多くの人たちのおかげです”という感謝の気持ちが込められていたことが十分に伝わり、私は涙してしまいました。

 良い結果を残すことが、部活動の本当の目的ではありません。“感謝の気持ち”、“元気な挨拶”、“素直さ”、“苦しくても耐え抜く精神”など、人として生きていく中で無くてはならない心を身につけることが部活動の最大の目的だと思っています。それらは技術的な向上よりも尊いものです。部活動で、技術や知識を身につけるよりも、もっと大切なことが得られたなら、全国大会に出場するよりも、ずっと価値のあることだと思います。そこに気付いてくれた生徒の顧問になれたことが最高に嬉しい今日この頃です。

レポート
東日本夢の架橋プロジェクト in America

食品科学類型 亀山 貴一

 『水産業は世界から盛り上がってくる!』
これはアメリカでNo.1のマグロ商社を経営されている方がおっしゃっていたことです。
この夏休みに生徒2名を引率し、アメリカはニューヨークへ行ってきました。東日本大震災で被災した水産高校を元気づけたいと、アメリカに住む日本人3名の方が企画してくださいました。

 主な内容は、語学研修とニュージャージーにある水産会社でのインタンーシップです。ニューヨークでは寿司やラーメンなどの日本食ブームが起こっており、水産業が右肩上がりで伸びてきています。生徒たちとそのような状況を、実際に“目で見て”、“食べて”、“就労体験”をしていく中で、世界規模の水産物流通を肌でビリビリ感じることができました。

 一方、今日の日本は水産業が低迷し、なかなか夢を見ることができないのが現状です。しかし!アメリカへ渡り、成功された方々のお話を聞くことで、「日本だけを見ているからダメなんだ。もっと世界に目を向けなくては!」と、私も生徒も意識がガラッと変わりました。そして生徒たちは「大学でもっと水産の勉強をして、いつかまたアメリカに来て、世界を相手に仕事がしたい!」と夢ができたと語ってくれました。
“水産業が低迷している”というのは、その言葉だけが先行しているのではないかと思います。アメリカだけではなく世界中で日本食がブーム。当然、日本でしか手に入らない魚介類、食材がたくさんあります。世界はそれを求めている。だからこそ、日本だけではなく“世界”を巻き込んで事業を展開するチャンスがある。そこで私は「夢のある仕事ができる人材を宮城県水産高校で育てたい」と決意しました。

 私たちは震災によって多くのものを失いましたが、世界中の方々が支援してくださっています。また、ありがたいことにこの研修は継続していきたいとも話してくださっています。“世界を感じたい”という高い志をもっているなら、是非宮水へ!震災がもたらしてくれたこの研修で得たものを活かし、地域復興の力となれるよう、過去のマイナスを未来のプラスに変えられるよう、生徒とともに頑張っていきたいと思います。

レポート
My Revolution

食品科学類型 青木 朝枝

 「これから大学に進学してもボランティアを続けます。そしていつか日本赤十字社の社員になりたいです。」―タイから帰ってきた彼の顔は真剣で、満足感に満ちていました。

 彼は1年生からJRC(青少年赤十字)に所属していましたが、当初は、積極的に行動するタイプではありませんでした。彼の口癖は「なんでもいいじゃないですか」―そう、受け身だったのです。

 そんな彼に自分を大きく変える転機が訪れます。それは、2ヶ月に渡る航海実習でした。狭い船中で生活することは、お互いを気遣うこと、思いやること。そして、自分がいま何をすべきか考え行動すること。様々なことを学んで帰港した彼には、受け身の姿はありませんでした。やはり、“海は少年を漢にする”という言葉には嘘はありません。

 そして、今年8月。2つ目の転機が訪れました。青少年赤十字の国際交流事業に宮城県代表としてタイへ派遣されたのです。現地で、タイ赤十字社スタッフをはじめ、多くの方々から熱烈に歓迎されたことが彼の心を変えるきっかけとなりました。“人のために行動するのが当たり前、無償の愛を与えることが最上の喜び”という「赤十字の理念」と「タイという国が持つ精神文化」を織り交ぜた丁重なおもてなしに触れ、彼の心の中にあったこれまでの赤十字活動への考え方がガラリと変わりました。それから、“本当の意味での赤十字活動”とは何か、ということを真剣に考えるようになりました。

 これまでは、“自分がやってあげたことを、同じように相手にもして欲しいという願望、そして、たくさん感謝されたい”という考え方が心のどこかにあったようです。それからは、「相手はいま、何を最も望んでいるのか。どうすればそれを相手が気兼ねしないように提供できるか」という考えに変わり、彼なりの“無償の愛”が芽生えました。
高校では、様々な経験ができるチャンスがたくさんあります。確かに彼が海外で貴重な経験が出来たのも偶然の巡り合わせだったのかもしれません。しかし、その機会を見逃さず、“とにかくやってみよう”という気持ちを持つことで、今まで知らなかった新たな世界を見て、自分を成長させ、自分の夢を明確にし、結果的に自分を変えることができるのではないでしょうか。―My Revolution―心配は多々あるけれど、「まずは行動から」です!

レポート
オーシャンキャンパス!!

情報科学科 若松 英治

 宮水では7月16日(海の日)に“「海」を身近に感じられる”イベント、「オーシャンキャンパス」を開催しました。このイベントは大型実習船「宮城丸」の体験乗船をはじめ、各科各類型・各部の展示・体験コーナー、モーターボート「ベガ」「スピカ」によるクルージングが企画され、およそ300名が来場する“興奮と笑顔”に満ちた大盛況のイベントとなりました。梅雨の時季にもかかわらず、当日は快晴で、海は凪ぎ、気持ちの良い風が吹く、まさに「オーシャン日和」な一日になりました。

 体験コーナーは、宮水渡波本校舎のほど近くにある万石浦を臨む艇庫に展開されました。航海類型では、解けにくく解きやすい“ロープワーク体験”、カツオに見立てた重りを3mもある竿で釣り上げる“男の一本釣り体験”、食品科学類型では、未来の自分へのメッセージを缶詰にする“タイム缶プセル”、“炭酸のつくり方”、“干物の大試食会&販売”、栽培漁業類型では、顕微鏡による“稚ウニ・稚ナマコ観察”、“種カキの育成説明”、マリンテクノ類型では、エンジンのメカニズムが良く分かる“エンジンの燃焼実験”、情報科学科では、無線通信を体験できる“電波の不思議”と、各科各類型の特色が活かされた、それぞれのコーナーに来場された方々も興味津々、たくさんの体験ができたようです。

 部活動では、花の苗をプレゼントしたJRC、ヨット部によるヨットの陸上体験乗船、水泳部のダイビング器材の試着体験、調理研究部の活動の展示がありました。

 オーシャンキャンパスの開催は今年で2度目。様々な企画を盛り込んだイベントとなりましたが、ここまで大きな規模のオーシャンキャンパスが開催されたのは今年が初です。石巻地区にとどまらず、仙台や大崎、遠くは栃木県、さらには海外からなど、たくさんの方々に来場していただきました。今後も回を重ねる毎に、楽しい企画が増えるでしょう。これからのオーシャンキャンパスも乞うご期待ください!

レポート
「ないものは、使わ(え)ない」~宮城丸 遠洋航海~

航海類型 増田 雄次郎

 宮城県水産高校・航海類型三年生は、実習船宮城丸にて4月25日~6月22日の59日間、遠洋マグロ延縄実習にいってまいりした。私も指導教官として乗船し、2ヶ月もの間、生徒たちと、まさに寝食を共にしてきたわけです。17~18歳の若者が、今までの日常からかけ離れた生活を経験したこともあり、とても充実したものになりました。

 延縄操業やハワイ上陸など興味のわくようなことは沢山ありますが、あえてここでは、洋上にて思ったことを一つ取り上げさせてもらいます。

 それは、「ないものは、使わ(え)ない」ということです。

 “テレビも携帯電話もない生活”が、現代の高校生に果たしてできるでしょうか?我々、大人でさえ携帯電話中心の生活になっています。食事中や会話中に携帯電話が鳴ったとき「ちょっとすみません」(これすら言わない場合もある)といって電話に出てはいないでしょうか。恥ずかしながら私はやってしまいます。これが当たり前のようになっていますね。船の中で生徒たちは広いとは言えない生徒食堂で互いに肘をぶつけながら食事をしました。もちろん船内では、携帯電話は鳴ることがなく、テレビも見られません。
そうやって38人の生徒が2ヶ月間(3食×59日=177食)、同じ釜の飯を食べて生活してきました。毎日見ていたテレビ、常に触っていた携帯電話が使えなくとも、その空間や時間を楽しむために、目の前の友人とたわいのない話をしながら食事をしてきました。

 これは「使えるのに使わない」という我慢ではありません。船の中では「ないものはない」ため、「あるもので楽しむ」ために様々な工夫をするのです。携帯電話がないなら隣にいる友人と楽しく話をすれば良いし、テレビがなくても海を眺めれば涙が出てきそうな景色が広がり、夕焼けやイルカなど、普段見られないものがたくさんあります。

 今の世の中、情報も含め“もの”が溢れかえっています。我々も自分の生活をもう一度見直して、“本当に必要なもの”と、そうでないものを見極める時期かもしれません。案外ない方が楽しかったりすることもあるかもしれません。無事帰港して陸の生活を見直してみると、大切なことは“便利さ”とはかけ離れたところにあるのではないかと感じられる2ヶ月間でした。単に“便利さ=時間の短縮”になりがちにはなっていませんかね。

知財
アイディアを形に

情報科学科 若松 英治

 皆さんは突然ひらめいたとても良いアイディアを実際に試してみたことはありますか?実を言うと宮水はアイディアの宝庫です。捨てる物、誰も食べようとしない物、無駄だと思われる何かを使って新しいものを開発する、魚介類や海藻などの新しい増やし方など、様々なアイディアは、なんと実習や部活動で実際のものとなっています。
 宮水ブランドであるサンマの缶詰では、頭や尾などは切り捨てて生ゴミとして扱われていました。そのうち、缶詰に使われない頭や尾などゴミの部分を利用して何かできないかと考える生徒が出てきました。その結果、「魚醤油」をつくることに成功し、『宇田川乃露』と命名されました。その製法はこれまでにない発見で特許も狙える新しい製品として注目を浴びました。ナマコが激減したときも、何とかナマコを増やせないか考えた結果、ナマコを増やす技術を開発し、地元に貢献したこともあります。また、渡波校舎の近くの海は津波により海藻が流され、魚が寄りつかない海になっていました。そこで、何を繁殖させたら早く海の生態系を復元できるかを考えた結果、成長の早いコンブを植えるアイディアがでました。どんな結果を生むか、これから潜って調査するところです。見たところ少しずつ元の豊かな海に戻りつつあるようです。
 その他にも、ブラックバスをおいしく食べる方法や、機械やコンピュータを使ったものづくりまで、まだまだ宮水にはアイディアがたくさんあります。その一つひとつを実現させようと生徒たちは日夜頑張っています。みなさんも宮水で食品や魚貝、海に関すること、ものづくり、でアイディアを形にしませんか?

コラム
海は怖いか

食品科学類型 油谷 弘毅

 あの震災以来、「海はとても怖いもの」と思っている方も多いのではないでしょうか。想像を超える自然の力の前に、私たちは、なすすべもありませんでした。あの日のことを思い出すと、とても悔しくてならず、また、海を恨み、海がとても怖いものだと感じました。
 震災により、海も大きな傷を負いました。地形は変わり、そこに棲んでいた生き物たちは流され、海は一時、死んだような状態になってしまったのです。しかし、今、海は確実に回復しています。変化した環境下でも、生き物たちは一生懸命に生き、その姿を私たちに見せてくれています。そして私たち人間も海との関わりを徐々に取り戻してきています。
 さあ、みなさん。今年の夏は、海に目を向けてみませんか?生き物たちの力強さを感じ、海と私たちの生活がどのくらい密接にかかわっているか、考えてみませんか?
 水産高校では今夏、皆様に日頃の学習内容を紹介するとともに、「海について考えてもらいたい」という思いを込めて「オーシャンキャンパス」を開催します。このイベントで皆さんがもっと海を知り、海に親しんでもらいたいのです。
具体的には大型実習船「宮城丸」の乗船(要予約、定員50名)や小型実習船での万石浦クルージング、海の生き物の観察などなど、海を学びの場としている私たちの授業の様子をちょっとだけ体験することができます。(詳しくは本校のHPで!)
宮水では、海を侮らず、海を恐れず、でも、海は「怒ると怖い」お母さん的存在として接し、その偉大さも学んでいるのです。


部活
基本は大事!?

マリンテクノ類型 平塚 和典

 「投げられる姿が美しい」男がいた。
私は柔道部の顧問ですが柔道の経験はありませんでした。11年前、30歳で顧問になるとともに柔道を始め、今では2段となり、柔道なしの人生は考えられないほどです。突然の手前ミソですが、本校柔道部に私が感心している選手がいます。
彼は昨年、県新人大会81kg級で優勝し、全国大会へのキップを手にした選手で、私が見たところでは彼の強さの秘訣は「投げられる姿が美しい」というところにあると思っています。練習相手が下手な投げをしても投げられる姿の美しさから、相手の技も上手く見えてきます。
―そう、そこにあるのは「しっかりした基本が身についている」ということなのです。
 柔道は腕力のある人間が勝つのではありません。相手が見せる一瞬の隙を勝利に導くのは、「力」ではなく「技」なのです。
では、「技」の練習をたくさんすれば勝てるようになるのでは!?と考えるのは当然です。しかし!!実は技の練習ばかりをしてもなかなか勝ちには繋がりません。それはなぜでしょうか?!
 それは「技」=「基本動作の連続した動き」であるからです。どんなスポーツでも、同じことが言えます。空手で言えば技の練習ばかりしている選手より、毎日基本に忠実に100回突きや蹴りの練習をしている選手の方が強くなるといえます。なぜかというと技は、突き、払い、受け、蹴りなど基本動作の組み合わせだからです。基本は地味で面白くないものですが、これを積み重ねることが、実は勝利への近道なのではないかと最近考えるようになりました。
 人生に近道があるとすれば、「漢字の読み書きと計算」をしっかり身につけること。その基礎基本の上に自分の好きな道(例えば水産や工業)の知識や技術が積み重なっていくのだと思います。「基本」を大切なもの、美しいものだと思えるようになれば開花する日は近いのだと思います。

部活
ラグビー(楽・苦・備)

航海類型  増田 雄次郎

最近、「草食系男子」という言葉をよく耳にしますが、一般社会でも積極的に辛いことに身を投じ心身を鍛えることは避ける傾向にあるようです。その対極にあるスポーツがラグビーであります。そうです私はラグビーが大好きで、水産高校ラグビー部の顧問をしています。ところで、海外のスポーツを漢字で表記するとき、ラグビーは、「蹴球(フットボール)」最近では「闘球(タックルなど競技の特徴)」と書いたりします。私は父の影響でラグビーを始めたのですが、父いわくラグビーの当て字は「楽・苦・備」(「楽しみ」と「苦しみ」を「備える」)と書くそうです。ラグビー部の顧問になり、その言葉の意味を改めて感じています。スポーツは本来の目的は楽しむべきものでありますが、部活動ではつらい練習もやらなければなりません。「勝つ喜び」「負ける悔しさ」「痛み」「勇気のあるタックル」「チームプレー」さまざまなことが合わさってスポーツを楽しむことができ、人間的に成長ができると思います。生徒たちを見ているとラグビーが好きで、楽しんで、笑って、悔しくて、泣いて、ラグビーを通して自己表現をしています。草食系もいいですが、喜怒哀楽、メリハリのある若者を育てていきたいですね。

コラム
今、旬なもの

食品科学類型 油谷 弘毅

古来より、日本人は食べ物で季節を意識してきました。畜肉などではあまり聞きませんが、魚介には脂がのっておいしい時期、「旬」があることを皆さんもご存じでしょう。
宮水では旬な授業が日々展開されています。春夏秋冬、獲ったり、育てたり、食べたりと。そう、「旬はすばらしい!」ということを宮水生は体(舌?)で学ぶのです。
 こんがりと焼けた旬の魚を目の前にした宮水生は、「あっ」という間に、頭と骨になるまできれいに食べてしまいます。その様子はまるでピラニアの大群が、川を渡る一頭の仔牛に襲いかかるかの様です。(注:ピラニアはとても臆病な魚で、自然界ではほとんど無い現象です。)「魚食離れ」という言葉が嘘のようです。
 実は、人間にも旬があるのです。中高生の時期がまさにその旬な時期です。「右足をガブリ」と、いうように本当に食べておいしい時期ではありません。何にでも前向きに取り組み、知識を吸収し、様々な人に出会うことで大海原に向かって行く準備をする時期、つまり「脂を蓄える」時期が中高生時代なのです。
 旬を意識すると、食べ物もおいしいし、毎日が楽しいし、いろんなことに挑戦できるし、ちょっとの苦労も我慢できるはずです。旬を大切に。

実習船
何が海へと駆り立てるのか!?

情報科学科 若松 英治

 突然ですが、みなさんは、石巻市渡波にある、サン・ファン・バウティスタ号をご覧になったことはありますか?この4月に宮城県水産高校情報科学科に赴任した私は、つい先日、長い間気になっていた、この船を観覧してきました。このサン・ファン・バウティスタ号は日本最初の和製西洋軍船です。思っていた以上に大きな船で、圧倒されました。そして、この木造船で3ヶ月かけてメキシコまで航海したということは、想像すればするほど、すごいことだと感じられてきました。何ヶ月も命がけの木造船航海生活をするのは、私なら気が狂うかもしれません。
 ふと本校に目をむけてみると、本校では、毎年、実習船「宮城丸」で2ヶ月もの間、ハワイ沖を航海する実習があります。この航海の中で自分の生活を振り返り、普段いかに便利な生活を送り、食べたいものを食べ、たくさんの人たちに支えられて生きてきたのかを実感するそうです。そして、ハワイに着くと滞在先に家族からの手紙が届いており、その手紙をじっと見つめ、何度も繰り返し読み、涙する生徒もいるということです。何が海へと駆り立てるのか!?航海の「ロマン」を知りたければ、宮水へ!
海は少年を「漢(おとこ)」にするのだそうです。